【感想・考察】トイストーリー4【PIXAR】
7月28日より公開された「トイストーリー4」
前作の「トイストーリー3」でラストとされていましたが、ヤードセールに出されたボー・ピープの行方は、明らかにされないままでした
アンディーとの感動の別れとなった前作から、どのように物語が展開されるのでしょうか
今回はそんな「トイストーリー4」を観た僕の感想と考察をご紹介します
今回の記事でも、劇中のストーリー紹介は省略しますので、具体的な内容を知りたい方はぜひ劇場へ!
ここから先は「トイストーリー4」のネタバレが含まれています!
今作もあります「ピクサーイースターエッグ」
映画の劇中に隠れている、過去作や制作スタジオにまつわる小ネタのことを「イースターエッグ」と呼んでいます
ディズニー映画では定番となっていて、今作でもしっかりと盛り込まれているようでした
ここでは、僕が確認できたイースターエッグをご紹介します(映画がオンライン配信されたころに、完全版として更新する予定です)
クローゼットの時計おじさん
ボニーのクローゼットで、ウッディーが埃まみれになっているシーンで登場する、ヒゲの生えた時計のおもちゃ
ウッディーへの親切心?で最後にボニーから遊んでもらった日からの日数を教えてくれます
この時計のおもちゃ、実はトイストーリーの短編作品「トイストーリー・オブ・ホラー」で登場する「オールドタイマー」というおもちゃ
ボニーたちが泊まったモーテルのオーナーが、宿泊客から盗んだおもちゃコレクションの1つとして写っています
ここでもやはり、時計としてウッディたちに時間を知らせる役割を果たしていました
バトルサウルスシリーズのカンカン箱
ボニーの初めての幼稚園で、ウッディがこっそりバッグから抜け出すシーン
カンカン箱を被りながら、床を移動していたのを覚えているでしょうか?
このカンカン箱に描かれていた恐竜のキャラクターも、トイストーリーの短編作品「トイストーリー・謎の恐竜ワールド」で登場しています
ボニーのお友達のお家で暮らす戦闘系おもちゃ「バトルサウルスシリーズ」の恐竜戦士が、このカンカン箱にプリントされているのです
同じシリーズのおもちゃが数多く販売されているようですから、バズがアンディの世代から大人気だったように、こちらはボニーの世代から支持を得ているおもちゃなのかもしれません
3人のコンバットカール
ウッディがボーと再会した公園で、ウッディにハイタッチを求めてきた兵隊人形たち
こちらも「トイストーリー・オブ・テラー」で登場したおもちゃで、ウッディたちと共にオーナーのコレクションボックスからの脱出を試みています
短編作品では、「コンバットカール」とミニサイズの「コンバットカールJr.」が登場していましたが、今作の3人のコンバットカール人形によって、服装にバリエーションがあることが判明しました
雪国の装いをしたコンバットーカールは、ウッディーからハイタッチをスルーされていましたが、最後にはデュークカブーンからハイタッチを受けていました
「コンバットカールはあきらめない!」
アンティークショップのブリキ人形
ボーがデュークカブーンに会うために、秘密のクラブハウスを訪れるシーン
スロットのボタンをリズムよく叩くと、扉が開いてマーチングバンドのブリキ人形がお出迎えしてくれます
トイストーリーの原型となったショートムービー「Tin Toy」の主人公として登場した「ティニー」というおもちゃ
人間の赤ちゃんからひたすら逃げるシーンが印象的です
今回の演出はまさに、ピクサーファンへのサプライズと言えるでしょう
アメリカの歴史がチラリ
同じく、秘密のクラブハウスでのシーン
ボーがみんなから歓迎を受けているシーンに、ワシの頭が写り込んでいます
これはトイストーリーの短編アニメ「ニセモノバズがやってきた」に登場しているおもちゃ
ハンバーガーショップのお子様セットのおまけとして登場していて、捨てられたおもちゃたちの支援グループのメンバーとして参加しています
アメリカの国鳥を硬貨のタイヤに乗せたデザインは、いかにも子供ウケ悪そう
しかしアンティークショップに並んでいるとなると、逆にぴったりですね
定番のピザプラネットバンやピクサーボールなどの登場もあったようですが、僕は見つけることができませんでした
他にもイースターエッグを見つけたという方、ぜひコメントで教えてください
キャラクター別で振り返るトイストーリー4
大胆イメチェン「ボー・ピープ」
トイストーリー1・2では、ウッディの恋人としての立ち位置、いわゆる「ヒロイン」だったわけですが、3での登場は全く無く…
トイストーリー3のラストでは、大人になったアンディーとの別れが描かれ、僕も涙無しには観れなかったわけですが、ボーのことは終わったあともずっとモヤモヤしていました
4の制作が決定し、「ウッディがボーを助けに行く話」という噂を聞いてから、僕は今作の公開を心待ちにしていました
劇中では、はじめにボーがどのようにしてウッディのもとを去ったのかが描かれます
2のその後、アンディーの妹モリーのおもちゃとなっていたボー
ある雨の夜、外に忘れられたバギーを助けるために、ウッディと連携して見事バギーの救出に成功します
その直後、ボーはヤードセールのダンボールに詰められて、外に運び出されてしまいます
連れ戻そうとするウッディですが、ボーはヤードセールに行くという自身の運命を受け入れ、「子供はいつもおもちゃを無くす」と諭すのです
ウッディの帽子にそっと触ると、最後のお別れを告げ、アンディの父親に連れていかれてしまうのです
思えば、アンディが大好きだったウッディが、トイストーリー3で彼の元から去るという決断ができたのも、このやりとりがあったからこそなのかも知れません
そして、数年の時を経て、ウッディと再開を果たします
もともと、杖でウッディを引き寄せたり、周りに流されず意見したりなど、男勝りな一面もあったボーピープ
今作では彼女の服装も、羊飼いの大きなスカートと帽子を脱ぎ、マントを羽織ったスマートなものに変わっていました
ヒーローのような風貌とアクションとは裏腹に、キティちゃんのような大きなリボンを付けている点も、個人的には好きなギャップです
ウッディとの別れから外の広大な世界を知ったボー
彼女の存在が、今作のラストで再びウッディに大きな決断をもたらすこととなるのです
ホコリまみれの「ウッディ」
今作最初の驚きは、おそらくウッディが長らくクローゼットに放置され、ホコリをかぶっている姿でしょう
トイストーリー3から短編作品まで、ずっとボニーのお気に入りだった彼は、すっかり飽きられてしまった様子で、クローゼットの中でただ出番が来るのを待っているだけでした
床に寝転ぶウッディをボニーのパパが踏み潰してしまうシーンもありましたね
ファンからすると、「こんな扱いするなんて酷すぎる!」という声も聞こえてきそうです
僕も心が痛みました
しかし、アンディーの部屋でも、ホコリをかぶっていたおもちゃがいたのを覚えていますでしょうか?
トイストーリー2で登場した「ウィージー」というペンギンのおもちゃ
すっかりアンディーに忘れられた様子で、溜まったホコリが原因で声を失っていました
こうして考えてみると、ボーの話す「子供はいつもおもちゃを無くす」という言葉の意味がわかる気がします
ここで僕が言いたいのは、ボニーやアンディーが酷い子供だということではなく、むしろそれが当たり前のことだということです
そういう不完全な部分があるからこそ、子供なのであって、人間なのです。
みなさんは、子供の頃に買ったおもちゃの最後を、どれくらい見届けていますか?
僕は半分にも満たないです
そんなおもちゃにとっては非情とも言える現実においても、自分を犠牲にしてボニーのために動くウッディ
ときにはボーたちの反感を買い1人になってしまう彼ですが、そんな彼の大冒険は「子供の幸せとは何か?」「おもちゃの幸せとは何か?」という質問を我々に投げかけてきます
新しい友達「フォーキー」
ボニーが幼稚園で作った自作のおもちゃとして登場するフォーキー
彼は自分がゴミだと思い込んで、ひたすらゴミ箱に飛び込もうとします
それを必死に止めようとするウッディですが、そんな彼には目もくれず、ボニーはフォーキーと遊び続けるのです
トイストーリー1では、自分のことをスペースレンジャーだと思い込んでいるバズが、ウッディのもとにやってきます
アンディのお気に入りとなったバズですが、ウッディはそのことに嫉妬して、バズを陥れるために策を練るのです
今作でも同じシチュエーションが起きていますが、ウッディはボニーのために自分を犠牲にしてフォーキーを守ります
こういった点でもウッディの成長が描かれているのです
一方、世界のことはおろか自分のことですら、何も知らないフォーキー
そんなフォーキーに対して、ウッディやギャビーキャビーは、自身の過去や夢を語っていきます
このように今作ではフォーキーという存在を介して、おもちゃの世界や登場キャラクターたちの心情を紐解いていく場面があります
フォーキーはストーリー上のキーパーソンとしてだけでなく、僕たち観客が世界を読み解く上での写し鏡としても役割を果たしていると言えるでしょう
今作のヴィラン?「ギャビーギャビー」
ウッディが訪れたアンティークショップで出会う女の子の人形
ベンソンという4人の腹話術人形を従え、ウッディのボイスボックスを手に入れるために、フォーキーを誘拐します
子供に一度も遊んでもらったことがなく、アンティークショップ店主の孫ハーモニーと遊ぶのが夢
フォーキーとのおしゃべりの中でウッディの素性を知る彼女は、彼女自身の夢もフォーキーに語ります
このシーンを見て、「あれ?もしかして良い子なの?」と思った人は少なくないはず
上項でも触れましたが、フォーキーが写し鏡となって主人公ウッディとヴィランであるギャビーの交流が図られているのです
その後、無理やりボイスボックスを奪おうとするも失敗し、ボーと別れ1人で店に戻ってきたウッディに、言葉でボイスボックスを譲ってもらえるよう懇願します
そしてボイスボックスを手に入れハーモニーの手に渡りますが、結局興味を示されることなく投げ捨てられてしまいます
過去作でもヴィランが酷い目に遭うシーンは多々ありましたが、今作ではそのシーンが暗く悲しいテイストで描かれています
それはギャビーがヴィランではなく、善良な1人のおもちゃとして扱われているからでしょう
そんな彼女に手を差し述べるウッディ、2人はボーたちと一緒に外の世界に飛び出します
もしかすると、最初からヴィランなんていなかったのかもしれません
このヴィランがいないというストーリー構成は、本作の大きな特徴と言えるでしょう
しかも、一度は悲しい結末を迎えるギャビーですが、最後は遊園地の迷子の少女に勇気を与え、新しい持ち主のもとに渡ります
主要キャラクターが誰一人不幸になっていない、最近のシリーズ映画ではあまり見ない展開です
単なる勧善懲悪を超えて観る人みんなを幸せにするこの作品は、すごくピクサーらしい良い映画だなと感じました
その他の新キャラクター達
今作では他にも愉快な仲間たちが登場しました
ざっくりと振り返っていきます
ダッキー&バニー
遊園地のシューティングゲームで景品にされていたアヒルとウサギのぬいぐるみ
持ち主となる子供のもとに行くのが夢で、突拍子もない妄想や止まらないおしゃべりで、漫才の如く笑いを誘います
吹替を人気お笑いコンビ「チョコレートプラネット」の2人が担当しており、鑑賞中いつ「ティーーーー!」と叫びだすかそわそわしていました笑
デュークカブーン
アンティークショップの秘密のクラブハウスで出会うバイクスタントのおもちゃ
CMの誇大広告を信じた持ち主の子供に幻滅されて、捨てられた過去を持つ
そのため自分に自信が持てないでいるが、劇中ラストでは華麗なジャンプを披露します
ギグル・マクディンプルズ
ウッディの方に乗っている小さい婦人警官の人形
外の世界に飛び出したボーとともに過ごしていたようで、ボーの良き理解者
ウッディとボーの恋を盛り立てる場面も
ビリー&ゴート&グラフ
おそらく本作を観るまで誰も名前を把握していなかったキャラクター
過去作で既に登場しているが、もはや新キャラクターといっても過言ではないでしょう笑
ボーのライトスタンドとセットの人形で、3匹の羊が身を寄せた姿をしています(決して3つの首が生えた羊ではないです)
ウッディも名前を知らなかったようで、呼び間違えて怒らせてしまうシーンも
ウッディとブルズアイのような関係性で、ボーのそばに寄り添います
ウッディの決断
終盤では、アンティークショップから抜け出したウッディたちと、フォーキーの伝言を聞いたバズたちが合流を果たし、ついにフィナーレを迎えます
結果的にウッディはボーといることを選んだわけですが、このことについて「ボニーを捨てた」という否定的な意見も耳にします
しかし、僕は全くそうは思いません
ウッディがこの決断に至る心情変化は、むしろ丁寧すぎるくらい、きちんと描かれていたと思います
何故ボニーのもとから離れたのか?
ボーに2度目の別れを告げ、バズたちのもとへ駆け寄るウッディ
後ろめたさでいっぱいのウッディに、バズが言います
「彼女は大丈夫だ」
ウッディは彼女という言葉をボーのことだと勘違いします
そこでさらにバズが一言
「ボニーは大丈夫だ」
この言葉を聞いたウッディは、バズに感謝の言葉を残して、ボーのもとへ駆け寄るのです
今作で最も心の葛藤に悩まされていたのは、紛れもなくウッディでしょう
彼はアンディやボニーとの幸せな日々を知っています
しかし今となっては、クローゼットの中で見守ることしかできません
子供にとってのおもちゃの重要性を知っていますから、愛するボーが去ってもついていくことはありません
フォーキーや仲間たちが危険にさらされれば、命懸けで助けます
そんなありとあらゆる重圧を背負っていたウッディですが、親友であるバズのこの一言が彼を救ったように思えます
最後の別れのシーンでは、保安官のバッジをジェシーに託します
この2つのシーンは、ボニーを守る役目をウッディからバズ&ジェシーへバトンタッチしたシーンと解釈しています
また、これまでの映画作品や短編作品で、ウッディの代わりにバズやジェシーが行動を起こすシーンも多く存在します
2人のウッディへの信頼も厚かったでしょうが、ウッディの2人に対する信頼も同様だったでしょう
この時すでに、ウッディはボニーを守る役目を終えているのです
何故ボーのもとに行ったのか?
今回の冒険でウッディが得たのはボーとの再会だけではありません
広い世界には素晴らしい景色が広がり、そこにはたくさんの子供たちが過ごしています
ギャビーやダッキー&バニーのように、新しい持ち主を求めるおもちゃもいますし、その逆も然り
ウッディはボーとの冒険を通じてそのことを知り、1人の子供に寄り添うのとは別の形で、使命を果たす道があることを理解するのです
もちろん、愛するボーと一緒にいたいという気持ちも強いと思います
しかし、その選択をできたのは、世界の子供たちを幸せにするという「おもちゃとしての大義」がそこにあったからでしょう
これら2つの動機を考えれば、ウッディがボニーのもとを離れ、ボーと一緒にいる決断をしたのはごく自然ですし、これ以上無いくらいのハッピーエンドだったと思います
「3で終わりにしとけば良かったのに…」という声も聞こえますが、僕はトイストーリー4の公開は大正解だと思います
むしろ今後も作品が続いていってもいいんじゃないかと考えているくらいです
まとめ
鑑賞してからレビューをブログに起こすまでに、すこし期間が空いてしまいました
今作はこれまでのピクサー映画の中でも、ファンサービス豊富な作品だったと思います
ピクサーは「大人も楽しめる絵本映画」と僕は勝手に呼んでいます笑
単純にキャラクターやストーリーの動きを楽しむこともできますし、変わった視点で切り取られた世界観を、過去作や自分の人生と照らし合わせて、その意味をじっくり考えることもできます
「シンプルな映画の中に驚きや感動が詰まっている」
それこそが僕の考えるピクサー映画の魅力なのです
そんなトイストーリー4の結末は、世間では賛否両論ですが、みなさんはどうお考えでしょうか?
良ければぜひコメント欄で教えてください